都市の緑としての街路樹

 街路樹には、経済効果、景観形成、公害対策、交通対策、気象緩和、生

態的維持、心理的効果などの役割がある。

 この7つの役割のうち、生態的維持と景観形成の役割を、都市の緑として、

十分に機能させるには、以下の2つが重要だと私は考える。




地域の生態系を考慮した樹種が植栽されること

  地域住民が街路樹に関心を持つこと



                                
 ここで私が言う、「地域の生態系を考慮した樹種」とは、その地域にもとか

ら自生していた植物、つまり既存種のことである。また景観形成に関しては、

各都市の個性ある景観形成ついてである。

 街路樹に、既存種を利用することによって、その都市の周りに存在する緑

へ違和感無くつながり、街路樹の持つエコロジカル・コリドーとしての機能を

最大限に引き出すことができるのではないだろうか。

既存種が街路樹として利用されているか

 そこで、既存種が街路樹として、利用されているか、また利用されていないなら

使用することができるかを調べるために、姫路工業大学の藤原道郎教授にご協

力いただいた。

 まず、現在、既存種が街路樹としてどの程度利用されているかを尋ねたところ、

それに関しては、まだリスト化されていないため、詳しいデータはないとのことだっ

た。しかし、植生学分野での植生図や地方植生誌などを利用して、地域に分

布している樹木を、街路樹として適しているものを選定するといった取り組みがさ

れていることがわかった。

既存種を街路樹としての利用の現実

 既存種を街路樹と使用することは、その地域の生態系、その地域特有の景観

形成のために望ましい。しかし、街路樹の選定からわかるように、街路樹が植栽さ

れる場所は、都市特有の環境である。地上は架空線とアスファルト、地下は上

下水道管に空間的制約を受け、排気ガスやアルカリ性土壌といった環境的制約

のため、その環境に適応できる樹種を、その地域の既存種から選ぶことは難し

いのが現状である。

  街路樹についての住民の関心

 現在、街路樹の管理・維持しているのは、行政である。街路樹は、公共の緑

のため、行政が管理するものという意識が住民の中に存在しており、住民の街

路樹に関する意識が低い。


   どのように関心を高めるか

 関心を高めるためには、街路樹に関する活動に、住民が参加できる機会の

提供が、最も良い方法だと考える。例えば、街路樹の樹種選定に、地域住民

が参加することである。どのような樹木が植えられることを望んでいるか意見を

聞き、地域住民の手で地域の景観を共に作っていく。それによって、地域の個

性ある景観が形成され、街路樹への関心が高まる中、地域に対する愛着も生

まれるのではないだろうか。

 街路樹を通して、住民の地域への関心が高まり、街路樹に関する活動が、地

域のコミュニティを形成することを望む。





 以上のことから、街路樹に既存種を使用することは、難しいと考えられ

る。街路樹に既存種を用いるには、道路環境に適した性質を品種改良

で開発などが必要だと思われる。しかし、それを実現するためには、コス

トがかかり、街路樹に既存種が選定されることはないと考えられる。しか

し、植栽される街路樹が既存種でなくとも、街路樹がエコロジカル・コリド

ーとしての役割を果たすことは期待できる。
  
 次に、住民による街路樹への関心である。



 街路樹が持つ、生態的維持、景観形成という機能を、十分に機能させ

るには、問題があった。既存種を用いて、エコロジカル・コリドーを形成す

ることは、都市特有の環境下では困難であった。また、街路樹に関する

住民の意識も低く、街路樹が都市の緑として、受け入れられるには、時

間がかかりそうだ。しかし、街路樹は、都市の緑として果たす役割は大き

く、これからも注目されることが望まれる。





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